冬の風物詩 津軽鉄道ストーブ列車と地吹雪
秋田発8時35分快速「しらかみ1号」が五所川原駅に着いたのが12時10分。降りたのは鉄道ファンと思しき中年の女性2人と私の3人だけであった。ストーブ列車に乗るには2時間もあるので吹雪の中を駅横にある観光案内所に寄ってから「立佞武多の館」に向かった。五所川原駅からだと歩いて5分で着くようだがこの吹雪では倍の10以上も歩いたように思われる。この「立佞武多の館」展望ラウンジで暖をとりながらゆっくりとお昼ご飯をいただく。食事を済ませて駅に向かうが、この吹雪で街には人影が見当たらず、車がたまに通る程度であった。関心にも共産党の議員?が車を降りて交差点の真ん中で街頭演説をしていた。津軽五所川原駅には出発15分位前に着いたが駅前には既にツアー客の観光バスが数台停車している。
津軽鉄道ストーブ列車は津軽五所川原駅から津軽中里駅間を1日に2往復。約20kmの距離を、約50分かけてゆっくりと走っている。ボクはツアー客が乗る前に乗車したのでダルマストーブの最前列に座ることができた。でも、これが大失敗だった。外は氷点下にもかかわらず、ストーブ真向いの席は、暖かいを通り越して暑く、閉口した。混んでいるので移動することもできない。まさに灼熱地獄の席といえる。ほどなく、ツアー客が乗り込んできたので車内は満員となる。こんな状況では遠路はるばるストーブ列車に乗るのを楽しみに津軽を訪れた乗客が乗れない事態が間違いなく発生するのではないかと、とても心配だ。ストーブ列車は全車自由席で、ストーブは1両に2ヵ所ずつ設置されているから、ストーブ近くの座席を確保したければ早目に並ぶ方が得策だとは思いますね。
視界をさえぎるものがない雪原は、息をのむ美しさ
なにしろ、昭和5年の「津軽鉄道」開業時から走っているというのだから、かなりの年季が入っている列車だ。旧型客車はこれまで各地で何回か乗っ てきたが、津軽鉄道の客車は昭和の雰囲気そのまんま。 車内の照明も、電球がボヤーと光っている程度で薄暗い。この薄暗さがまた良い雰囲気を醸しだしている。ノスタルジックな温もりを感じさせながら、14時10分発の津軽中里行は定刻通り出発する。列車は五所川原の市街地を出ると、旧十川を渡りしばらくすると見渡す限り真っ白な津軽平野に出た。大きな木や建物など、視界をさえぎるものが何もない雪原の眺めの美しさは筆舌に尽くし難い。
ストーブ列車の車内ではアテンダントの女性が生粋の津軽弁でユーモラスに案内しながら、列車はゴトゴト進むのがなんともローカルぽくってイイ。車内には地吹雪で雪や冷気が窓などの隙間から吹き込んでくるが、ダルマストーブの暖気で暖かい。 津鉄のはっぴを着た車販のおじさんが売りに来たので お酒(300円)と スルメ(300円)を頼んだら、アテンダンとの女性がストーブでスルメを焼いてくれました。一度には食べきれないので周りの団体客の皆さんに振る舞うことにした。出発して20分、沿線で一番大きな町金木に到着。この駅で団体客がドッと降りていく。金木は太宰治の出身地としても知られている。さらに、同じように美しい雪原が、芦野公園から川倉間でも見られる。津軽鉄道の車窓風景は進行方向左手には広大な津軽平野が広がっているが、右手には逆に険しい山々が聳える。津軽半島を南北に貫く中山山脈(津軽山地)である。列車のスピードは実にゆっくりとしているが、終点はあっという間に近づいてきた。深郷田(ふこうだ)という珍名の駅を過ぎると、終点の津軽中里はすぐそこだ。
14時57分、五所川原から約50分の道のりを経て、ストーブ列車は津軽中里(つがるなかさと)に到着した。折り返しが発車するまでは20分ほど時間があるので、駅周辺をぶらぶらするつもりであったが、この大雪では無理なので早々とホームに上がり、写真を撮ったりして構内を観察した。まず目に付いたのは大胆な毛筆書体の駅名標。この駅名標の隣には、ストーブ列車の写真とともに「日本最北の私鉄津軽鉄道」「最北の駅津軽中里駅」と書かれたもう一つの駅名標がある。確かに、本州最北の私鉄だった「下北交通大畑線(旧国鉄大畑線)」が廃止となり、北海道唯一の私鉄転換路線の「北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線(旧国鉄池北線)」も廃止になって、今や日本でいちばん北にある私鉄は津軽鉄道なのだ。このように旧国鉄から第三セクターに転換された路線はことごとく消滅、昭和3年(会社設立)から一貫して私鉄でがんばっている津軽鉄道は、経営努力と沿線のサポート によって生き残ることが出来た貴重な鉄道なのであるということを再認識させられた旅でした。
2011/1/14(金)
駅一覧
津軽五所川原駅ー十川駅ー五農校前駅ー津軽飯詰駅ー毘沙門駅ー嘉瀬駅ー金木駅ー 芦野公園駅ー川倉駅ー大沢内駅ー深郷田駅ー津軽中里駅
※ 「赤」の駅は硬券と駅スタンプが表示されています。「青」の駅は駅スタンプのみです。
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