絶景広がる冬の大糸線 松本~糸魚川
新宿10:00発(スーパーあずさ11号)→松本着12:31 松本発(13:09)→南小谷着(16:02) 南小谷発(16:06)→糸魚川着(17:04)の予定で大糸線の旅はスタートした。12両編成の「スーパーあずさ11号」は12号車を先頭に松本に向け出発、座席は進行方向左側の11号車10番D席を確保する。大糸線は、松本と糸魚川を結ぶ雄大な北アルプスを一望できる風光明媚なローカルです。
線名の由来は、信濃大町と糸魚川間を結ぶ路線として建設されたということからついている。そして、実際の運行形態は、松本~南小谷と南小谷~糸魚川とに二分される。その昔は全線を走る急行もあったが、今は南小谷を境界駅としてに完全に南北に分かれており、南はJR東日本による電化路線、北はJR西日本による非電化路線だ。ゆえに、一本の線としての統一したイメージは薄いが、南北それぞれに違う趣があり、景色はどちらも素晴らしい。
雄大な北アルプスの山並み 美しい安曇野を行く
松本駅から乗る大糸線は駅のホームも離れ、のんびりムード。列車は篠ノ井線の長野方面へ向けて松本を出発してすぐに北松本、島内、島高松と小さな駅にこまめに停車する。駅を出たと思ったらすぐ次の駅。一面のホームのみの停留場も多く、交換設備がある駅でもホームは短い。長い列車は停車できないスモールサイズ。一日市場(ひといちば)もそうだ。跨線橋のない、どこか懐かしさのある駅。ホームの途中を崩して作った構内踏切を、お客さんはそれを渡って木造駅舎の改札に向かう。車窓から見るとローカル線の風情が漂い、絵になる光景だ。同じように忘れられないのは高山本線猪谷駅(JR東海・西日本の境界駅)で見た構内踏切を渡り木造駅舎に向かう交代するJR東海の車掌さんの後姿が印象に残っていてる。
北に針路をとった列車は一直線に安曇野を進む。車窓左には真っ白な雪化粧をまとった北アルプスの名峰が見えてくる。名峰に見とれる間もなく、中萱・南豊科・豊科と肥沃な大地と豊かな水に恵まれた安曇野の穀倉地帯を走る。夏にでもなれば水田の緑がみずみずしく感じれれることだろう。列車が穂高あたりまで来ると車窓から見える北アルプスの風景も、梓橋付近で見える常念岳を中心とした山々から、有明山を中心とした山々に変わってくる。短い駅間をゆっくりと走る列車は安曇追分・北細野・信濃松川駅間を停車しては発車を繰り返している。でも、大糸線は北アルプスの山々が楽しめるので一向に飽きが来ない。やがて、安曇野平野の終わりを思わせる景色に変わり、さらに安曇野沓掛・信濃常盤・南大町を過ぎれば、沿線最大の都市である黒部・立山アルペンルートの玄関口でもある信濃大町に着く。ここまで松本から約1時間。
思わず下車したくなる車窓風景
松本からの列車は信濃大町での折り返しが多く、この駅から先は本数がさらに半減する。信濃大町では20分後の南小谷行に乗車するまではホームで写真を撮ったりして待つことにする。列車が北大町を過ぎて信濃木崎まで来くると木崎湖が車窓左側に見えてきた。これは仁科三湖の一つで、信濃木崎から海ノ口までの間ずっと線路際に湖岸が沿っている。海ノ口を出ると次はスキー場で有名な簗場、ここを出ると中綱湖、そしてそれに続いて青木湖が車窓左側見え始める。ここも線路は湖岸に沿っているので、次の南神城の手前までは湖をゆっくり楽しむことができる。特に青木湖水深が58mと深く、透明度が高いので湖水がじつに美しく見える。南神城・神城と続き、やがて鹿島槍の二峰や五龍岳が間近に見える。そして飯森に停まって白馬に着く。ここも白馬もスキーヤーのメッカ。白馬岳を前方左側に見て列車はさらに北上して信濃森上に到着する。ここから栂池高原の東側を進み白馬大池・千国に停まれば次は南小谷だ。
暴れ川の異名で知られる「姫川」
南小谷からは更に列車本数が減って、一日7本になってしまう。南小谷に到着すると跨線橋を渡った2番線ホームでは4分後に出発する1両のディーゼルカーが出発を待っていた。今日は珍しく運転士の他にJR西日本の制服がよく似合う年配の車掌さんがいた。列車が発車すると間もなくアンケート用紙を持ってお客さん1人1人に『どの駅からどの駅まで、どのような理由で利用しているのか』とアンケートをとり始めた。北陸新幹線が開業されると、並行する北陸本線は地元第三セクターに経営分離される。そうなると大糸線は同社の「飛び地」になってしまう。そのため大糸線の南小谷駅以北のJR西日本側は、廃止も噂されているから、そのための利用状況調査だったのでしょうか。こんなに車窓の美しい路線はなんとか残してほしいものです。乗客も10人足らずと少ないのでアンケートもほどなく終わり、それから糸魚川に着くまで沿線の魅力についていろいろと車掌さんに教えていただいた。それにしても、1両でも空席たっぷりの乗客数は、平日の日中とはいえ、寂しい限り。南小谷を発車するとそれまでの景色とは一転して姫川の刻む谷間を川とともに下る形になって進む。終点の糸魚川まで鉄道の中では有数の難所とも言えるフォッサマグナ(中央地溝帯)に沿って走っている。地形的には既に白馬方面から日本海側で、海に向かって下る一方なのだ。ちなみに大糸線の分水嶺は簗場~南神城間。
進む列車の車窓には雪原に佇む鹿は見えたが、人家は見当たらず、伸びやかな風景が 広がり北小谷・平岩・小滝と駅間も長くなる。長いトンネルを抜け、姫川を渡れば新潟県。この付近は冬になると豪雪に見舞われる。そして左手に温泉宿が見えてくれば、新潟県最初の駅となる平岩に着く。山峡ながら一応の集落は形成されているものの、車窓からは廃屋も目立ち活気は感じられない寂しそうな駅前であった。小滝付近では少し視界がひらけて明星山が左に見える。そしてようやく田圃が見えれば根知到着だ。ここからは頸城平野に入り、人家も見えてくる。頸城大野・姫川と進み、北陸本線の架線が見えてくると、速度をおとして終点糸魚川駅へ。ここまで南小谷から1時間。山あいの中を一両の列車がコトコト走る風景はまさに「ローカル線」そのもの。広い構内を持ち、主要駅の堂々たる風格のある糸魚川に到着したのが17時4分、松本から途中下車することもなく4時間の大糸線の長い旅がようやく終わる。北陸本線に合流して、気動車は何事もなかったように「カラカラ」とアイドリングを続けている。アンケートをとっていた車掌さんは挨拶する間もなく足早に駅舎に消えていった。駅前から5分ほど歩くとそこはもう日本海だ。既に冬の海は暗く、冷たい風が激しく海から吹いてきた。
2012/1/16(月)
駅一覧
松本駅―北松本駅―島内駅―島高松駅―梓橋駅―一日市場駅―中萱駅―南豊科駅―豊科駅―柏矢町駅―穂高駅―有明駅―安曇追分駅―細野駅―北細野駅―信濃松川駅―安曇沓掛駅―信濃常盤駅―南大町駅―信濃大町駅―北大町駅―信濃木崎駅―稲尾駅―海ノ口駅―簗場駅―※(臨)ヤナバスキー場前駅ー南神城駅―神城駅―飯森駅―白馬駅―信濃森上駅―白馬大池駅―千国駅―南小谷駅 ―中土駅―北小谷駅―平岩駅―小滝駅―根知駅―頸城大野駅―姫川駅―糸魚川駅
※ 昭和50年(1975年)以降の( )新駅名・※印は設置された新駅。
※ 「赤」の駅は硬券と駅スタンプが表示されています。「青」の駅は駅スタンプのみです。