ローカル線冬の旅
陸奥湾に沿って本州最北端の大湊線を行く!
大湊線(おおみなとせん)は、青森県上北郡野辺地町の野辺地駅から、下北半島の陸奥湾側を縦貫してむつ市の大湊駅までを結ぶ平坦でカーブの少ない非電化の単線路線。「浜なすベイライン大湊線」という愛称が付けられている。この日は青森から直通運転の「快速「しもきた」/青森発9:22 野辺地着9:50 大湊駅着10:58」に乗車、海が見える進行方向左側の席を確保して雪が降る中を出発した。この列車にはローカル線の旅を楽しむ中年の男性四人組や観光客の姿もちらほら見られた。
野辺地駅を過ぎたあたりから雪もやみ晴れた穏やかな日だった。野辺地駅を出でおよそ20分、二つ目の有戸駅を過ぎると、車窓は陸奥湾の海原を大きく映し出していた。ここから次の吹越駅間が一番眺めがよく、快晴の日に見た陸奥湾の景色は、まさに絶景だった。海の彼方に浮かんで見える下北半島の主峰・釜臥山(かまふせやま、かまぶせやま)がことのほか美しく思わず身を乗り出し、もっと景色がよく見えるようにとガラス窓を拭いてみる。白い波がいくつも立つ深い群青色の海。線路際には、赤茶けた枯れ草が飛ばされるほどにたなびいていて寒風に耐えている。
スピードを落としたディーゼル列車の小刻みな揺れがゆったりとしてキハ100系の静かなエンジン音が心地よい。「ここいらへんは風の強い所だから、スピードを落としてゆっくり走ったり、運休になることはよくある」と、隣の席に座っている地元の人とおぼしきおばさんがそう話す。列車は交換駅陸奥横浜を通過、速度を上げて順調に先へと進んで行く、ホタテ貝の養殖が盛んな有畑駅、そしてむつ市の玄関であり恐山の入口にあたる下北駅へ時間通りに到着した。下北駅は、かつて大畑へと延びる下北交通大畑線(下北駅~大畑駅)が分岐していたところ。廃線で大畑駅(おおはたえき)がなくなったことや、終点の大湊駅よりやや北に位置しているため、現在、下北駅が本州最北端の駅として知られるようになった。余談だが同じ漢字の駅名でもJR九州肥薩線の駅は大畑駅(おこばえき)と読む、この駅は日本で唯一、ループ線の中にスイッチバックを併せ持つ駅として知られいます。下北駅では多くの乗客が降りていった。まもなく終点の大湊だ。
飛地路線となった大湊線
下北半島の海に囲まれた独特の地形から大湊線の走る付近は風が強く、特に冬場は徐行運転や運休が頻繁に起きるのだという。ただし、運休になった場合でも代行バスが運転されるので、情報の届かない無人駅で待っていても心配はなさそうだ。新幹線が八戸~新青森間の延伸延伸開業により、八戸~青森間の東北本線が「青い森鉄道」に転換されたことにより、大湊線はJR東日本のほかの在来線とまったく接続しなくなったのも大きな変化だ。つまり”飛地路線”という現象が起きたのである。他にも平成27年3月の北陸新幹線金沢開業に伴いJR西日本の金沢~倶利伽羅間がIRいしかわ鉄道に転換された七尾線も同じだ。
陸奥湾産の新鮮な活ホタテが素材!