北海道新幹線開業と同時に、並行在来線の旧JR江差線五稜郭~木古内間を引き継いで営業運転を開始した道南いさりび鉄道(いさ鉄)。移管にあたっての新駅開業は皆無で、JR時代と変わらない全12駅となっている。新線名の由来は沿線の海に浮かぶイカ釣り漁船の漁り火(いさりび)から。車両は江差線で使用していたワンマン仕様のディーゼルカー(キハ40形)をそのまま引き継いでいる。9両の内2両は濃紺の内外装ともにリニューアルが施されたオリジナルカラーのイベント列車「ながまれ号」。この列車は団体や観光列車へ優先的に運用されるが、余裕がある時は通常の普通列車としても運転されていて、1番線ホームで待機していたのがまさにその列車であった。「ながまれ」とは道南地域の懐かしい方言で「ゆっくりして・のんびりして」という意味のようだ。いつものように北海道最後の夜を函館で迎え、今日はは函館発10時40分のいさ鉄に乗って、函館から終点の木古内を目指すミニ旅行に出かけてみた。函館からアクセス列車で新函館北斗駅に向かうのではなく、「いさ鉄」で一つ先の木古内駅に向かう想定である。
- 函館から木古内へ -
函館を定刻に発車した「ながまれ号」の座席は地元客と鉄道ファンで半分ほど埋まっている。最初の停車駅は五稜郭。始発駅は函館だったこの列車ですが、「いさ鉄」の起点駅は五稜郭で、函館と五稜郭の間はJR函館本線に乗り入れという形を取っている。最初の停車駅五稜郭を出て函館本線と分かれ、渡島半島を東に向けて進む木古内行き「ながまれ号」。函館のベットタウン上磯までは街の中を走るルートのため、平凡な家並や工場が続く。そのため、利用客が多い区間で、函館~上磯には区間運転の列車も設定されている。函館から20分ほど、そんな上磯で何人かの乗客がまとまって下車していった。
函館山と津軽海峡を一望できる海岸線をのんびり走る
そして上磯を出てからしばらくすると、列車は津軽海峡沿いの海景色が綺麗なところを走るようになった。海越しの近くに見えるのは、函館のシンボルで、標高334メートルの函館山。遠くに見えるのは、本州の青森県下北半島。津軽海峡を間近に眺められる車窓風景が、いさ鉄の醍醐味といえる。今日は曇っていたので霞んでいるが、快晴ともなれば、海の向こうには下北半島がクッキリと見える。次の停車駅茂辺地(もへじ)で函館行きの下り列車と交換(いさ鉄は津軽海峡線時代と変わらず、函館方面へ行く列車が下り、木古内方面へ行く列車が上りです)。
「ながまれ号」はのんびりと軽快なエンジン音を響かせて海岸線をうねるように走る。トラピスト修道院の最寄り駅であることから修道院を模した渡島当別(おしまとうべつ)、釜谷、泉沢、札苅(さつかり)へ。ドーンと大きな海が見えたかと思うと、小さな入り江にこじんまりした漁港や昔懐かしい田舎の集落があったりする沿線風景を津軽海峡を横目に見ながら走り続け、函館から一時間。やがて車窓の右手からは、北海道新幹線の高架が近づいてきた。それが見えると、北海道最南端の駅木古内に到着する。
2016年12月5日
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