スーパー北斗 車窓の雪景色の旅 東室蘭ー函館
追分から南千歳乗換で函館に向かった。目的は冬の噴火湾・大沼・駒ケ岳の絶景と北海道新幹線の開業により廃止される急行寝台「はまなす」の見納めである。「はまなす」の函館到着は深夜の0時40分だから路面電車「函館市電」でのんびり十字街方面への函館旅をして待機することにする。日程は追分10時05分発(スーパーおおぞら2号札幌行)→南千歳10時17分着 南千歳10時52分発(スーパー北斗8号函館行)→函館着13時54分 。
乗換の南千歳ではスーパー北斗8号(以下「列車」という)到着まで35分もあるから一旦改札を出て駅周辺をブラブラしたり、ホームで到着する特急「スーパーおおぞら」や特急「スーパーとかち」等の写真を撮ったりして 、のんびりと待つことにする。この路線は札幌発だと東室蘭まで、函館発では東室蘭から混雑するので自由席に乗る場合は、少し早めにホームで待機してる方が無難だろう。
やはりこの日も混んでいて乗降口デッキ部分にも乗客が立っているので、1号車の指定席、2列目13番D席に席に着くのが大変だった。ボクは山側より噴火湾寄りの海側車窓風景が好きなのでいつものようにD席を確保していた(上下線とも海側はD席)。発車して間もなく車掌さんが指定席車両の1・2・4・5号車の通路を混雑のため解放するとのアナウンスがある。そのため、ワゴンも車内移動が難しくなりデッキでの販売に切り替える区間も生じたほどであった。
列車はやがて大きな工場が目立つ苫小牧に到着。いつもながら製紙会社の巨大煙突の姿に圧倒される。車内では客室乗務員のお姉さんが長万部名物かなやの『かにめし』、合田の『折詰もりそば』の注文を受けている。注文された駅弁は長万部駅にて積み込まれ、その後、客室乗務員のお姉さんによって届けられるようになっている。ボクは、すでに南千歳の駅売店で「ホッキ飯」を購入していたので、パスした。 後日談として、函館駅到着後にたまたま駅構内のコンビニで遇ったエプロンを脱いだ普段着姿の件(くだん)のお姉さんに、注文数をたずねたところ愛想のよい笑顔を浮かべながら、「かにめし」25個、「折詰もりそば」5個とのことであった。
噴火湾と駒ケ岳
何本かの薄暗いトンネルを過ぎて室蘭港を後にした列車は緩やかな右カーブを切りながら黄金駅に差し掛かると、室蘭の街は見えなくなり、車窓には大海原が拡がった。劇的な景観の変化だった。波飛沫が飛んできそうなほど海に近いレールの上を走っている。海は、噴火湾(内浦湾)だ。Cの形をした巨大な湾で、海岸の長さは約150kmにも達し、東京湾の約1.8倍もある相当する広さだ。そのCの中間あたりに位置するのが長万部だ。噴火湾(内浦湾)と呼ばれる所以は活火山の有珠山、駒ケ岳などが、湾を取り囲んでいるためだ。海と反対側の車窓には有珠山が見えた。
伊達紋別駅に近づくにつれて、有珠山がしだいに大きく迫ってきた。有珠山は血気盛んな山だ。頻繁な火山活動により、山頂部から山麓に至るまで、新しい火口や溶岩ドームが生まれている。明治新山、昭和新山、有珠新山といった新しい溶岩ドームは、観光名所となり、自然の脅威に感嘆する人々でにぎわっている。そして伊達紋別駅で数人の客を乗せた列車は、人気の少ない駅を通過し、有珠山から隠れるように、切り通しの中を進んだ。列車が洞爺駅に近付くと、有珠山が再び顔を出す。
長万部は、函館本線と室蘭本線の分岐駅
洞爺駅は、名前が示すように洞爺湖の最寄駅である。温泉地として名高い洞爺湖温泉郷は、洞爺湖の南岸に位置し、背後には有珠山が聳えている。かつては、溢れんばかりの観光客で賑わっていた温泉地も今では広いホームに乗り降りする乗客は、数える程だった。列車は洞爺駅を後にすると、岩盤を穿つ(うがつ)トンネルを進んだ。暗いトンネルと、眩しい海が、交互に車窓に現れた。豊浦の街を通り過ぎると、噴火湾の向こうに、駒ケ岳が姿をみせた。室蘭で見た駒ケ岳より、小さく見えた。Cの字型の内浦湾沿いに進んでいるので、直線距離としては、駒ケ岳から遠のいているためだ。やがて、列車は静狩付近の寂し気な景色を振り払うかのように、先を急いでスピードを上げた。寂し気だった沿線に家々が建ち並び賑やかさを取り戻せば、長万部(おしゃまんべ)だ。
長万部は、函館本線と室蘭本線の分岐駅となっている。函館本線の、ニセコ、小樽方面 は通称「山線」(ニセコアンヌプリや羊蹄山の山間部を走るため)と言われ、対になる室蘭本線の、室蘭、苫小牧方面は通称「海線」(太平洋沿岸を走るため)と言われている。いま、列車が走ってき た線路だ。かつては山線には多くの優等列車が往来していたが、徐々に函館駅ー札幌駅間のメインルートとしての役割は海線へ移り、1986年(昭和61年)11月1日に定期の優等列車が山線から全廃されている。
長万部駅を過ぎると、列車は国道5号(大沼国道)と並んで走った。閑散としていた静狩付近の国道37号(胆振国道)と打って変わり、大沼国道には、大型観光バスが停まれるような広い駐車場を備えたドライブインの旗やのぼりが街道を賑わしている。列車が、オオワシやオジロワシが飛来する遊楽部(ユーラップ)川に架かる橋梁を渡り、八雲駅に到着すると、数人の乗客が乗り込んできた。直ぐに、列車は、八雲駅を発ち、幾つかの小さな駅を通り過ぎた。「いかめし」で全国的に知られている森駅での停車時間は、1分にも満たなかった。
大沼・ 駒ヶ岳の絶景
森駅を過ぎると長く付き合ってくれた海岸線と別れ、山間に進路を変えた。車窓を楽しませてくれた噴火湾とは森駅でお別れとなった。峠のトンネルを抜け出すと、噴火湾に変わって主役の躍り出たのは湖水風景と雄大な駒ケ岳だ。駒ケ岳の裾野を列車が進むにつれて見る角度が変わり、荒々しい山肌と傾斜が目に付く男性的な姿から横に長くなだらかで優美な女性的な姿を見せてくれる。静かな大沼の対岸には、麓まで真っ白な雪に 覆われている 駒ケ岳が、車窓から聳え立って見える。湖越しに眺める冬晴れの駒ヶ岳はことのほか雄大で美しい。平らな山頂部の左端には、駒ケ岳のチャームポイントとも言える尖がった頂上 が、馬の耳のように空に向かってツンと立っている。隣の外国人旅行者はヘッドホンを装着したままキャノン製カメラのシャッターを しきりに押している。
北海道新幹線新駅に生まれ変わる「渡島大野駅」
列車は山間部に分け入り、雪に埋まった小さな仁山(無人駅)を通過すると、次は渡島大野(無人駅)だ。この駅はいよいよ今月の26日開業される北海道新幹線が札幌まで全通する2031年(15年間)までの終着駅となる。現在の利用客が、学生を中心に100人チョイと寂しい状況の函館本線「渡島大野駅」は新幹線開業当日の26日に「新函館北斗駅」に改称されて、新時代の函館の玄関駅に躍り出る。列車は坂を下りて市街地に入ると、一部の特急列車も停車する五稜郭駅を通過すれば、5分で北海道の玄関口、終点函館駅に到着する。 2016/1/29(金)
赤の駅は切符・駅スタンプ(ない駅もあります)、青の駅は駅スタンプがご覧になれます。
千歳空港駅(南千歳駅)ー美々駅ー植苗駅ー沼ノ端駅ー苫小牧駅ー※青葉駅ー糸井駅ー錦岡駅ー社台駅ー白老駅ー萩野駅ー北吉原駅ー竹浦駅ー虎杖浜駅ー登別駅ー富浦駅ー幌別駅ー鷲別駅ー東室蘭駅ー本輪西駅ー崎守駅ー黄金駅ー稀府駅ー伊達紋別駅ー長和駅ー有珠駅ー洞爺駅ー豊浦駅ー大岸駅ー礼文駅ー小幌駅ー静狩駅ー×旭浜駅ー長万部駅ー中ノ沢駅ー国縫駅ー北豊津駅ー黒岩駅ー山崎駅ー鷲ノ星駅ー八雲駅ー山越駅ー野田生駅ー落部駅ー石倉駅ー本石倉駅ー石谷駅ー桂川駅ー森駅ー姫川駅ー東山駅ー駒ヶ岳駅ー赤井川駅ー大沼公園駅ー大沼駅ー仁山駅ー渡島大野駅ー七飯駅ー大中山駅ー桔梗駅ー五稜郭駅ー函館駅
※印 は昭和50年(1975年)以後に設置された新駅、( )内は改称駅名、×は廃止駅。
はじめまして。いつも楽しく拝見させて頂いております。
投稿情報: hmd | 2016/04/01 20:32
こんばんは!コメントいただきながら連絡が遅れて大変失礼いたしました。まだまだ訪問者も一日2~3人と寂しい内容ですが、これから楽しみながら投稿を多くしていく予定です。今後ともよろしくおねがいします!
投稿情報: moshichi | 2016/05/01 23:17