根室本線(花咲線)の夏旅
湿原、海岸線を走り、最果て旅情漂う大自然の中を日本最東端へ
根室本線の釧路~根室間は花咲線の愛称がついている。札幌から根室までの直通列車は1本もなく、ここ釧路で乗り換えが必要になる。この日は、札幌発9時4分の釧路行特急「スーパーおおぞら3号」で13時3分釧路着。到着した1番線から2番線ホームに移動して13時11分発の列車で終点根室まで花咲線全線往復することにした。この列車は釧路と根室間を2時間17分で結んでいる。根室駅での停車時間は32分、今度はこの列車が釧路行として折り返している。根室での滞在時間はあまりないので、駅周辺をぶらつくことにした。
定刻になり、満員の乗客を乗せ釧路を発車する。いよいよこれから片道2時間17分、釧路に戻るには往復5時間を少し超える旅だ。運よく海側の右側窓際席を確保できた。車内では天井に取り付けられた大型扇風機がブンブンと唸りを上げて回転している。無帽のため、強風にあおられて薄めの髪はボサボサで格好悪いことこの上ない。 列車は東釧路で釧網本線と別れると直ぐに武佐に停車する。
4番目の別保駅からトンネルを抜けると、人家は途切れ山間に分け入って行く。この先、上尾幌駅、尾幌駅、門静駅間には人家はほとんど無く、原生森や湿原の中を東へ向け延々と走り、突然人家が現れたところで駅に停まる。森の中にはシカの群れがいたりするので、片時も車窓から目を離せない。更に原野を横切り、上空にオオセグロカモメが飛ぶ厚岸に到着する。厚岸駅では学生を中心に多くの乗客が降りた。
厚岸駅を出ると、車窓の右側には厚岸湾が望める。 霧多布の岬が対面にあり、本島と岬に囲まれた湖が厚岸湖。水鳥やタンチョウが生息している。いかにも湿原といった感じのラムサール条約に登録された別寒辺牛(べかんべうし)湿原では、とても美しい車窓風景が広がる。
かつて標津(しべつ)線が分岐していた厚床(あっとこ)を過ぎて初田牛(はったうし)に近づくと列車は高音の「ピー」という警笛を鳴らしながら急ブレーキが掛かったので前をみたら、目の前に鹿がいて、ぶつかる寸前であった。この「ピー」という高音の汽笛は「鹿笛」と呼ばれ、鹿などの野生動物が列車に接近していることを知らせる警笛で、鹿を発見した時やカーブの手前で、この警笛をしばしば耳にした。
落石の手前では太平洋岸の高台の上へ出る。一瞬だが雄大な景色が広がる。線路近くまでホルスタインが放牧されていてサイロが見える北海道らしい風景が間近にある西和田駅。「花咲ガニ」で知られている花咲、東根室を過ぎれば終点根室に到着する。
改札口を抜け、だだっ広い駅前に降り立つ。記念に駅窓口で硬券を買い求め、駅スタンプも押してきた。根室駅は日本最東端の駅と言いたいところだが、隣の東根室駅が最東端の駅となっている。しかも根室本線の線路の終端は西を向いているというのも意外だ。途中下車したい衝動に駆られるが、これから先の予定もあるので断念する。
2011年9月10日(土)
駅一覧
釧路駅―東釧路駅―※武佐駅―別保駅―上尾幌駅―尾幌駅―門静駅―厚岸駅―糸魚沢―茶内駅―浜中駅―姉別駅―厚床駅―初田牛駅―別当賀駅―落石駅―昆布盛ー西和田駅―花咲駅―東根室駅―根室駅
※印は昭和50年(1975年)以降に設置された新駅・×廃止駅
※ 「赤」の駅は硬券と駅スタンプが表示されています。「青」の駅は駅スタンプのみです。
コメント
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