“直ぐ実行”景気後退期のSEM対策
ここのところ毎年のように2桁成長をしていた新興国の中国やインドも第2四半期の実質GDP成長率は1桁台と急ブレーキがかかり成長が鈍化してきた。とくに中国はオリンピックが終わったこともありこれから餃子問題の行方や失業、チベット問題の動向が気がかりだ。 サブプライムローンによる米国経済の低迷、高止まり傾向があるにせよ原油価格や穀物市場の高騰など、グローバル化した世界経済にスタグフレーションの懸念がつきまとっている。欧州や日本経済も今年の4月~6月の国内総生産(GDP)はマイナス成長だ。 最近の第3・四半期(9月決算の企業)の決算発表を見ても昨年に比べて減益の企業が目立つようになり、どうやら昨年末をピークに景気の上昇にストップがかかってきた。株価も下落しており、今後の展望に暗雲がただよってきた。 2002年から始まった戦後最長の好況とは、企業にとっての好況でしかなかった。この間それに見合った賃金が上昇せず、労働分配率が低下を続けた状況は、「企業価値の向上を錦の御旗にした企業のエゴ、なかんずく状業員いじめ」としか思えない。次なる企業にとっての宿題は、従業員の処遇改善である。 そのため、一般消費者への影響も大きく、物を購入するにも価格を吟味して、本当に自分が興味を持った物にしか財布の紐を緩めないといった状況が顕著だ。 このことは、販売する側から見れば今まで以上に商品やサービス自体の魅力を高めることはもとより、プロモーション手法も一層の工夫が必要だろう。この難局を乗り切るために、費用対効果を意識したコストパフォーマンスの高いプロモーションを意識する企業が増えることは論を待たない。 先日も、関与先のGT社(5月決算)のG社長が今年の決算は売上げ粗利とも2桁に近い伸びを見たのにもかかわらず、若干の赤字になったとのことであった。理由を聞くと経費の増大による赤字であるから、必要不可欠な経費以外は見直しをするとのことであった。 その中で「いの1番にやり玉にあがったのはSEM対策のリスティグ広告」であった。この会社の年間のSEM対策としてのリスティング広告予算は600万円、企業規模からみればかなりの金額だ。トヨタ自動車も広告費の予算は3割カットするようだ。 上位表示はリスティング広告よりSEOを優先!! そこで、G社長はSEM対策の予算を半減するための方策として、SEOで10以内(1ページ)に表示されているキーワード全ての出稿を取りやめることにした。 今まで出向しているキーワードの数は約800種類ほどになっているが、幸いにもこの会社は数年前からSEM対策を意識したホームページプロモーションを行なっていたため、SEOとしても、かなりの数の複合語のキーワードが10位以内に表示されているからできることかもしれない。一般企業ではなかなか難しいことだが━。 一般論からいえば、こういう時期だからこそ、プル型広告のリスティング(検索連動型広告)は、検索に連動して広告が表示されて、クリックによって課金されるため効果的だ。さらにWEB広告の特性から効果測定も可能であることから他の広告費を削ってでもSEM対策として出稿する企業が増えるように思われる。 でも、漫然と出稿したのでは費用対効果のメリットを享受することは不可能になる。そこで少しでも無駄を排除するためにはターゲット以外の検索ユーザーを誘導することのないよう、戦略的にノイズを防ぐ設定を行なうことがSEM対策として重要になる。その手法としては、次の5点が挙げられる。 ◇ (1)SEOで10位以内に表示されているキーワードの出稿を中止する ◇ (2)見込み客が検索するキーワードを絞り込む ◇ (3)関連性の薄いキーワードの除外設定をする ◇ (4)サービス対象地域のみの配信設定をする ◇ (5)各キーワードにおけるライバル企業の数を把握する 具体的の補足すると (1)SEOで10位以内に表示されているキーワードの出稿を中止する 上述のようにSEO対策で10位以内に表示されている企業が対象になります。 (2)見込み客が検索するキーワードを絞り込む SEM対策として検索数の多い単一ワードよりも複合語の洗いだしを図り、検索数の多いキーワードを出稿する。例えば、パッケージソフトを販売しているソフトメーカーであれば「販売」や「在庫管理」より「販売管理」「販売管理システム」「販売管理ソフト」、「在庫管理システム」「在庫管理ソフト」と出稿すると効果的だし、クリック単価も安い。 気をつけたいのは、「プロ向けと素人向けのキーワード」が存在することである。例えば、廃木材と廃プラスチックから創られた木材は、工務店や建築設計事務所のプロは「合成木材」「リサイクルウッド」「再生木材」と検索するが、素人は「腐らない木」とか「バルコニーデッキ」「ウッドデッキ」「塀・フェンス」のような具体的なキーワードで検索する傾向がある。 (3) 関連性の薄いキーワードの除外設定をする アクセス解析を行い「明らかに問い合わせに結びつかない」と思われるキーワードをあらかじめ排除して無駄なコストを抑える方法です。 例えば、千葉県の不動産会社が「不動産」というキーワードでオーバーチュアに出稿すると[九州のお客様から問合せが来ても・・・・・?] というようなケースも考えられます。その場合は、あらかじめ「九州 不動産」「北海道 不動産」等のキーワードを除外して設定してしまうことです。 (4)サービス対象地域のみの配信設定をする 2007年4月にオーバーチュアは「新スポンサードサーチ」の新たな機能として「地域ターゲティグ」は選択した地域または検索利用者が興味を持った地域に広告を表示することができます。日本全国また特定の地域に絞ってビジネスを宣伝することが可能となることは、オーバーチュアとして地方の中小企業を新たな広告主として取り込むことが可能になるのでその辺を意識した狙いではないか。 前に勤務していたソフトメーカーは東京本社のみで地方の営業所がなかった。でも、問い合わせや資料請求は地方が半分以上を占めた。対応できないからといって無視することもできずに随分と無駄な労力が費やされたものだ。 そこで、どうしたかというと当時はこのような機能もなかったので「見出し」「説明文」などのキャッチコピーの作り方に知恵をだして「そのエリア以外のお客様にクリックさせない方法」を編みだした。 その工夫とは、タイトルに「首都圏地域企業様限定販売!」として、フォローできる地域を絞り込んだことである。ビジネスパーソンとして「難しい、できないでは済まない、『打つ手は無限』ポジティブな姿勢はとても大事だ」。 (5)各キーワードにおけるライバル企業の数を把握する オーバーチュアを例にとれば、広告主はページの上部に4社、下部に2社、右側には8社(上位2社は下部掲載の2社が重複表示)が表示されているのでライバル企業はどことどこかが把握できる。同じキーワードでもライバル企業はオーバーチュアとアドワーズの両方に出稿しているとは限らないためそのライバル企業の少ない隙間を狙うもとも可能だ。 そんな面倒なことは時間の無駄だとお考えの企業には「検索順位チエックツールGRC」をおすすめしたい。フリーウェアだから利用は無料です(無料版は項目数に制限あり)。その他にも便利な機能が満載です。 これらの作業は、特別に難しいことではなくビジネスに携わる者にとっては至極当たり前のことである。しかし、残念ながらいろいろな企業の担当者の話を聞いたり調べて見ると手間のかかる分、価格設定が大雑把(平均単価より一律〇〇円プラス)だったりして中途半端な企業がほとんどだ。それより実際のところは全く手をつけていない企業は意外に多いように思えてならない。SEM対策としては失格といわざるを得ない。 リスティング広告に限らず業績の良い企業はおしなべて「景気の善し悪しに関係なく“当たり前のことを当たり前に”(徹底できればたいしたものだ)そして確認、確認、確認”を励行してPDCAを行なっている」といっても過言ではない。