特急オホーツクin石北本線
乗換の待ち時間を利用して駅前のタクシーで網走刑務所、オホーツク流氷館を慌ただしく回ってきた。ぎりぎりセーフで網走発13時29分の特急「オホーツク6号」札幌行のグリーン車で一路旭川を目指すことにする。オホーツクは国鉄時代に製造され、今でも活躍しているキハ183系。別名ボローツクなんて皮肉られることもあるくらい古い車両だ。そのため、グリーン車の座席といえど、ちょっと使い込まれている感はある。といっても、私は気にならないどころか、非常に快適だった。基本は4両編成であるが、今日の編成は5両で座った席は3号車グリーン2番C席でかなり大きくゆったりと座れた。半室がグリーン車である。1人掛けの方がC席で、2席の窓側がA席・通路側がB席になっている。席番号は1~7で、全部で21席のプレミアムな空間になっている。乗客はたったの2人で、静かな空間でくつろぎの旅が期待できそうだ。
車内販売を行う客室乗務員は、グリーン車の乗客に対するサービスも合わせて行うことになっていて、飲み物がサービスとして提供される。北斗など列車によっては「雑誌」や「ひざかけ」のサービスもある。このため、グリーン車の横の準備室に普段待機しているので車内販売を利用するなら、グリーン車またはグリーン車の近くの指定席が便利だ。どの列車も客室乗務員は、のんびりしている。「売上目標××円!」などというノルマがあるような印象は全く感じない。僕は厚かましくも飲み物のお代わりをしたが快く応じてくれたくらいだ。
市街地の中心部からやや離れた網走駅を出発して間もなく、網走湖を車窓右側に列車は網走川沿いを進む。網走湖をあとに列車は女満別、女満別空港の最寄り駅西女満別をへと進み、網走川を渡り、かつて相生線(美幌駅ー北見相生駅間)が分岐していた 美幌駅へ、美幌町と北見盆地の境にある小さな峠を越えて緋牛内(ひうしない)。常呂川(ところがわ)を渡り、住宅街を抜けると端野、今度の停車駅は北見だ。北見を出て直ぐに長大な北見トンネルを抜けると北見のベッドタウン西北見に。列車は東相内駅(ひがしあいのない)、相内駅と進む、北見盆地の風景が開けいちめんの畑が広がっている。見渡す限りのタマネギ畑の中を列車は走る。また、北見はハッカの生産量が世界一。北海道らしい雄大な旅情あふれる車窓風景を五感で味わいながら旅は続く。
次の停車駅は読むの書くのも難しい留辺蘂(るべしべ)に停まり、次の停車駅である生田原、遠軽方面に向かう。列車は西留辺蘂を過ぎて畑作地帯から森林地帯へ入る。峠を前にした山間の小さな金華(かねはな)駅を通過するとそこは峠の難所だった常紋トンネルだ。列車で通過するとあっけない程短い500mほどのトンネルだが、3年の歳月をかけて「タコ部屋労働」で作られている。かつて蒸気機関車が全盛の頃には、あえぐように煙を上げて進まなければならない難所であった。また、力強い機関車の勇姿を求めて多くの鉄道ファンが集まった撮影の名所でもある。列車はトンネルを抜けて細かくカーブしながら峠を下ると生田原、広大な農地が広がる生野、安国と駆け抜けて遠軽に到着した。
遠軽駅から先は行き止まりのスイッチバック駅である。進行方向が逆になるので、座席をひっくり返す。予約を 受けていた「かに飯」5,6個が積み込まれた。かつては線路がまっすぐオホーツクに向かって名寄本線が伸びていて、中湧別、紋別、興部(おこっぺ)を経由して宗谷本線の名寄まで繋がっていた。遠軽には幼馴染が住んでいるので機会を捉えてこれらの廃線跡を次回は訪ねてみたい。発車すると、車内放送で「これから先は野生動物が出没する地域を走行してまいります。安全運転には努めますが、危険回避のためやむを得ず急ブレーキをかける場合もありますので・・・」と注意を喚起する放送が流れた。 瀬戸瀬駅、丸瀬布を通過して、次の停車駅は白滝だ。
この間には進行方向左側に湧別川が迫る下白滝、旧白滝がある。旧白滝駅は元々開拓民が入ったところだが、作物が育たず隣の白滝に移り住んだため旧白滝の名前が付いたといわれている。白滝駅を発車した列車は上白滝を通過して、いよいよ人里離れた区間に突入、北見峠(石北トンネル)に向かって登って行く。
石北本線 忘れられる駅
北見峠のトンネルを抜けると、今では時刻表には出ていない上越駅を通過する。この駅は1975年(昭和50年)までは上越駅として営業していたが、住んでいる人がいなくなったため、現在は信号場になっている。この上越駅を挟んで奥白滝、中越の2つの駅も2001年(平成13年)から信号場だ。この3つの駅が信号場に変わったことにより上白滝駅から次の停車駅の上川までは何と34km。普通列車は山手線1周よりも長い1時間8分かけて山深い原生林の中をひたすら走り峠を越え行く。
やがて鉄道ファンおなじみ「森林公園いこい森」丸瀬布を過ぎれば上川に到着する 。上川は層雲峡に西側から入る玄関口で、層雲峡からの帰りと思われる登山姿の数人が乗って来た。市街地を離れた列車は東雲、安足間、愛山と進む。石狩川を渡り中愛別を過ぎた辺りからは沿線に幾分山々が近づき、右側車窓には連なる大雪山系の山々を眺めながら快適に進む。伊香牛、将軍山、当麻、桜岡、北日出、東旭川、と長閑な田園風景の農村地帯を走る。南流山からは市街地に入り、石北本線の起点となる新旭川駅で宗谷本線とわかれた列車は北海道大2の都市・旭川に定刻の17時12分に到着した。所要時間は3時間43分、この日の旭川は気温20℃を下回り、半そで姿ではうすら寒く、夜の街歩きもほどほどにしてホテルの戻った。これから明日の「普通列車で行く宗谷本線全線の旅」に備えて早めに寝ることにする。
2011年9月11日(日)
駅一覧
網走駅ー呼人駅ー女満別駅ー西女満別駅ー美幌駅ー緋牛内駅ー端野駅ー愛し野駅ー柏陽駅ー北見駅ー西北見駅ー東相内駅ー相内駅ー留辺蘂駅ー西留辺蘂駅ー金華駅ー生田原駅-生野駅ー安国駅ー遠軽駅ー瀬戸瀬駅ー丸瀬布駅ー下白滝駅ー旧白滝駅ー白滝駅ー上白滝駅ー上川駅ー東雲駅ー安足間駅ー愛山駅ー中愛別駅ー愛別駅ー伊香牛駅―将軍山駅ー当麻駅ー桜岡駅ー北日ノ出駅ー東旭川駅ー南永山駅ー新旭川駅
昭和50年(1975年)以降には将軍山駅、愛山駅、東雲駅など多くの仮乗降場が駅に変更されています。また、上越駅・中越駅・奥白滝駅などが信号場に変わりました。
改称駅:「相ノ内駅」→「相内駅」、「東相ノ内駅」→「東相内駅」。
廃止駅:伊奈牛駅、天幕駅、新栄野駅。新設駅:西留辺蘂駅。
とってもいいお話しだ。
投稿情報: ける | 2018/04/12 21:40