吹雪の宗谷本線
吹雪の名寄から10時13分発特急「スーパー宗谷」1号で稚内へ、到着は12時53分。目的は乗る機会に恵まれなかった特急「サロベツ」で冬の宗谷本線の車窓風景を満喫したいからである。発車まで小一時間の余裕があるので、先ず構内の食事処「ふじ田」で「ホタテチャーハン」を食べてホームに向かう。宗谷本線には特急「スーパー宗谷」2往復と特急「サロベツ」が1往復している。指定席は往復ともDにする。理由は往路も復路もD席は天塩川方向の窓際であることから、車窓からの川風景を楽しめるからだ。さらに窓枠との関係から、普通車指定席の場合は、札幌発の場合で1号車のときは奇数番、それ以外の場合は偶数番のほうが、視界が広くなるので申し分ない。
13時44分稚内発の特急「サロベツ」は、最初の停車駅「南稚内」で多くの乗客を乗せた。さっそく切符拝見にきた車掌さんは昨夜の特急「スーパー宗谷」3号に旭川から勤務した車掌さんだった。僕のことも覚えていて、この先幌延から滝川辺りまでは吹雪でかなりの運休がでているとのことであった。この様子では明後日の4日が運行最終日となる留萌本線「留萌~増毛」間も運休だろう。発車して間もなくサロベツ原野に突入する。晴れた日であれば抜海(ばっかい)辺りに、日本海に浮かぶ利尻富士こと利尻富士を望む絶景ポイントが展開される。ここは鉄道ファンせあれば誰もが知る「北海道三大車窓風景」のひとつだ。しかし、この天候では日本海が霞んで見える程度で利尻島は見えない。
兜沼を過ぎると、流れが急なサロベツ川の鉄橋を渡る。道も人家もない荒涼とした原野の積雪はまだ所々で見受けられる程度だ。もうしばらくして一面の銀世界ともなれば雪面にエゾシカ、キツネ、ウサギの足跡を確認することができることであろう。
宗谷本線に 沿って流れる「天塩川」
豊富、幌延を過ぎると天塩川が近づいてくる。右手にいくつかの蛇行する小さな沢をたどると、その先にドーンと本流が現れた。豊富な水量を蓄えて深青色の川が滔々と流れている。雄信内(おのっぷない)トンネルを抜けると、視界が広がり粉雪が舞っている。鉄路と並行に流れる天塩川は、やがて緩やかに右カーブすると、問寒別川(といかんべつがわ)との合流点にさしかかる。宗谷本線のハイライトだ。なんと大自然の雄大な伸びやかな風景なのだろう。思わず身を乗り出して魅入ってしまう。
問寒別駅を通過すると、疎林に突入した。そこには産卵を終えた弱った鮭を狙ってサハリンから宗谷海峡を越えて北海道に渡ったオオワシが越冬している。雪は次第に激しくなり天塩中川駅に停車する。この辺りから豪雪地帯で積雪はたっぷりある。天塩中川と音威子府間は天塩川の峡谷で、山が左右から迫ってくる。鉄路は天塩川の右岸を忠実にたどる。列車がエゾシカと衝突する機会がもっもお多いのがこの区間だ。深雪の原野で一番歩きやすいのが鉄路なのだから、エゾシカが出没するのは必至だ。
やがて筬島(おさしま)ちかくで天塩川が直角に曲がる大屈曲点にさしかかる。車窓風景は吹雪で霞んでいても絶景で、窓越しに何度もシャッターを押す。到着した音威子府は小さな村で、かつては廃止となった天北線が分岐していた。併設されている「天北線資料室」には当時の資料が展示されている。また常盤軒の黒い「音威子府そば」は古くから旅行者の間で知られ村の名産品ともなっている。名寄方面からの対向列車(普通列車)がエゾシカと衝突して遅れが発生したためこの駅でしばらく停車する。
ここから鉄路は天塩川に付かず離れずの距離を保ちながら、美深、さらに名寄へと南下していく。名寄では件の車掌さんが車内放送で、この列車以降の普通、快速、特急は全て運休するので、通路を解放するとの案内があった。このためデッキは学生でいっぱいになったが、士別で全員降りて行った。列車は次の停車駅和寒を通過すると遅れを取り戻すかのように旭川へ急いだ。ようやく特急サロベツは雪まみれになって旭川駅に到着する。
5年前に訪れた時には工事中で「イオンモール旭川駅前」もなかったが、いや~ホントに立派になりました。さすが北海道第二の都市(人口)だけのことはあると感心しつつ”爆弾低気圧”の影響で強風が吹きつける雪の中を足早に駅前のワシントンホテル旭川に急いだ。
JR北海道は経営面から宗谷本線の一部区間の廃止も検討されている。とくに北部分(名寄~稚内)はJR北海道の中でも大きな赤字を出しているので心配だ。今のうちに一度はは乗ってみてはどうだろうか。。。
2016年12月2日
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