『石狩平野を走る冬の札沼線 車窓の旅(北海道)』
とうとう、3月のダイヤ改正で新十津川に行く列車が1本だけに!
札沼線は桑園~新十津川間を結ぶ、76.4kmの路線です。昭和47(1972)年までは札幌と留萌本線の石狩沼田間を結んでいたため、この名称が付いている。2012年に電化された桑園~北海道医療大学間は通勤・通学に多くの乗客が利用しているが、途中の石狩当別~新十津川間は1日3本しか走らないローカルムード満点の赤字路線です。今年3月のダイヤ改正では1日1本と減便されますので、廃止の方向に向かっていると思えてなりません。新十津川行きの直通列車はないため、札幌発9時55分の北海道医療大学行を利用して、一つ手前の石狩当別乗り換えで新十津川に向かうことにした。
札沼線沿線には北海道医療大学や北海道教育大学などが数多くあることから「学園都市線」という愛称が付けられている。車内は多くの学生でロングシートの座席は埋まっていた。札幌から桑園までは複線の函館本線とは別にもう1本ある札沼線専用の線路を走り、本線から分岐すると、左遠方に手稲の山が見えてくる。高架駅の八軒、新川、新琴似を通過、車窓風景は左右ともに雑然とした住宅街であるが、高い建物がないためすこぶる見通しはよい。あいの里公園から左にカーブして北海道で最長の石狩川橋梁(1,100m)を渡ると、札幌市から石狩当別町に入る。石狩太美付近の田園風景を北上すると当別町の中心地、石狩当別に到着。
札幌からの大半の列車は一部を除いてここで折り返す。ここからは1両のキハ40系を中心に運行する北区間(石狩当別~新十津川)だ。しかし、南区間(札幌~石狩当別)の10往復前後は、さらに1つ先の北海道医療大学まで運用されている。これから乗る新十津川行は既にホームで待機しているが、出発まで40分もある為、いったん改札を出て駅周辺をぶらぶらする。この駅は札沼線が全通するまでは南区間の終点駅でホームも2面3線の立派なもので、駅関係者数人がホームの除雪作業をしている。駅舎も橋上駅化され、かつての中間駅から南北へ走る中核駅に変貌していた。札沼線では北限となるみどりの窓口や自動改札もが備えられていた。駅周辺も小さいながらも住宅街が軒を連なるほどの立派な町になっている。若い駅員さんに常備券や補充券の有無を訪ねるが不愛想に「ない」とこのこであった(石狩月形駅には硬券入場券、常備券、補充券が用意されている)。仕方がないので記念にマルス入場券を購入する。
北海道医療大学~十津川間はJR北海道「ワースト1」区間!
列車は石狩当別からは国道275号に沿って走る。この道路は札幌方面から道北方面への裏街道として交通量も多い。列車は石狩平野の西端をゆっくりとひた走る。札幌を出るときは晴れていたが、この辺りから次第に雲行きが怪しくなり雪が降りだした。春ともなれば国道より近い線路沿いには水芭蕉など美しい野の花も見られるようだ。しかし、雪に覆われた一面の銀世界では何も見えない。雪は次第に激しくなり、石狩金沢、本中小屋、中小屋と、雪に覆われた貨車改造の駅舎と片面ホームが続く。月ヶ岡、知来乙(ちらいおつ)を過ぎて、北区間の中間駅では乗降客の多い石狩月形に到着。石狩月形から終点の十津川までは、行き違い可能な駅がない。そのため、この駅では今時としては珍しいタブレットの交換が行われる。既に上りの列車(札幌方面)が到着していたため、当務駅長が下り運転士に渡す瞬間しか確認できなかったのは残念であった。
列車は山間の谷間を進み、秘境駅豊ヶ岡は国道からかなり離れ、この一帯だけが木々に囲まれて静かに佇む何もないところだ。1日の利用客は鉄道マニアの一握りであろう。さらに線路を進むと、谷間を抜けて再び国道275号線と併走する。車窓には白銀の田園地帯が広がり、全通と同時に開業した札比内(さっぴない)、晩生内(おそきない)、札的(さってき)という難読駅名が続く。
そして浦臼(うらうす)に到着、腰の曲がった「おばあちゃん」2人が乗ってきた。乗客は数人降りたので2人増えても7人だ。ここ浦臼から北の十津川方面へは、何と1日3往復の超閑散区間に入る。浦臼を出ると、かつて鶴がこの地に住み着いたという説がある鶴沼に入り、国鉄時代は仮乗降場だった於札内(おさつない)を過ぎれば浦臼町か ら新十津川町に入る。
いよいよ終点に近づいてきた。南下徳富、下徳富という無人駅を通過、浦臼から乗車した「おばあちゃん」2人はこの間の駅で別々に降りて行った。於札内から十津川方面は何れも超閑散な無人駅。
豪雪の新十津川駅舎
そして終点の新十津川駅に到着。その後も降雪は激しさを増し、視界はどんどん悪くなっていく。降りた乗客はボク他4人。皆さん鉄道好きなようで、着くや早速撮影モードに突入。2人は駅舎に備えてある駅ノート(駅の隣にある空知中央病院が設置して、記載内容は病院の公式サイトで公開されている)にコメントを残して豪雪の駅を離れた。ここから滝川市街までは地図サイトで見ると、道なり4.4kmだ。おそらく十津川役場前のバス停から北海道中央バス若しくはタクシーで滝川市街に出るつもりであろう。札幌や旭川へ出るにはこのルートの方がはるかに早いが、ボクは22分後出発の折り返し列車で札幌へ戻ることにした。都市路線と地方ローカル線の共存路線へと変貌を遂げた札沼線、次回は気候のいい時期(5月~10月)を選んで新十津川から石狩川に架かる「滝新橋」を渡り、滝川市街まで平坦な石狩平野をのんびりと歩いてみたい。その前に昔読んだ「石狩平野」船山馨著(河出書房)明治編・大正編・昭和編を読み返してみるつもりだ。
2016/1/27(水)
駅一覧
桑園駅―八軒駅―新川駅―新琴似駅―太平駅―百合が原駅―篠路駅―拓北駅―あいの里教育大駅―あいの里公園駅―石狩太美駅―石狩当別駅―北海道医療大駅―石狩金沢駅―本中小屋駅―中小屋駅―月ヶ岡駅―知来乙駅―石狩月形駅―豊ヶ岡駅―札比内駅―晩生内駅―札的駅―浦臼駅―鶴沼駅―於札内駅―南下徳富駅―下徳富駅―×中徳富駅―新十津川駅
※ ×印は昭和50年(1975年)以降に廃止された新駅。
※ 「赤」の駅は硬券と駅スタンプが表示されています。「青」の駅は駅スタンプのみです。